38's blog

読んだ本や観た映画の自分なりの感想と日記を。

西加奈子「きりこについて」を読んで

 

 

西加奈子「きりこについて」読了しました。

 

昨日「漁港の肉子ちゃん」を読んで久しぶりに小説を読んで温かい気持ちになり(ミステリーとかサスペンスとか人間関係ごたごたしたりとか人が変な死に方する本ばかりセレクトする自分のせいだが)、一緒に借りて来た「きりこについて」も読み終えました。ちなみに肉子ちゃんが私の初西加奈子作品でした。

 

 

「ブログ書こうかな!」と思うのは、登場人物や物語が複雑だったり、自分の中でまとめてスッキリしたいという気持ちが強いのですが、今回は読書ノートにうまくまとめられなくて悔しいから。(笑)

 

読み終えてすぐ今年分の読書ノートに感想を書いているのは、記録したい気持ちと、文字に表したい気持ちと、全然字を書かなくなってしまったから。

字は汚いけど、文字を書くのは元々好きでお手紙とかも未だに大好き。

 

ただ読了後ハイ(本を読んだ後その世界に浸る一種の興奮状態)のまま脈略もなくバーッと書いてしまうので、途中何書いてるか分からなくなる&後から読み直して軽く後悔する。

 

その点ブログは一応人様に見られるという意識もあるし無い脳みそで文章をじっくり考えられる。何より訂正が楽。

 

 

 

 

余談はさておき「きりこについて」について。

きりこと、賢い黒猫・ラムセス2世とのお話。

 

物語は大阪の小さな街。

鹿児島出身彫りの深い顔のパァパと、

一重の涼しげな目を持つ美人のマァマの間に生まれたきりこ。

本作の一行目は「きりこは、ぶすである。」である。

パァパからは濃い眉毛、マァマからは完璧な顔立ちの中で唯一の欠点であるガチャガチャの歯並び、そして親戚達からそれぞれ悪い点をひとつずつもらってきりこは形成されている。

それでも一人娘のきりこはパァパとマァマに沢山愛情を注がれ可愛がられ育って来たので、自分のことを「うち、いけてんちゃう?めっちゃ可愛いやろ?」と思い生きて来た。

 

作中で、子供の脳みそは十一歳まで安定せず、

それは大人が酔っぱらっている状態に似ているらしい。という記述がある。

それによりきりこの周りの友人たちは洗脳され、きりこによるきりこのためのきりこルールでの遊びに違和感を抱かずに、きりこは女子のリーダーに君臨する。

 

この部分を読んですごく共感した。

例のごとく私も小学校低学年くらいまで女子の中でのヒエラルキーが何故かめちゃくちゃ高い(と思っていた)子がいて、ボスの機嫌を取らなければならないという漠然としたルールがあった。

 

小学校に上がったきりこは、「足が早い・喧嘩が強い・ハンサム」という典型的に女子が好きな要素を兼ね備えた男の子・こうた君に恋をする。

初潮を迎え、「女の子」から「女」へ進化したきりこはこうた君へラブレターを認める。ラムセス2世と一緒に考えた渾身のラブレターを。

 

しかしそのラブレターが「あんなぶす事件」を引き起こしてしまう。

ラブレターを黒板に飾られ、からかわれたこうた君が発した一言で、クラス全員が「酔い」から醒めてしまう。きりこが、ぶすである、ということ。

 

この「酔い」が醒める瞬間にも既視感があった。

ボスは女子によく見られる"協力の要請"を強いており、その男子と仲良くすることを許さなかった。

きりこのように思いを伝えるも玉砕、それからボスは大人しくなったし、他の女子もボス中心の「グループ」から抜けていったように思える。

 

自分のどこがぶすか全く分からなかったきりこも、同級生のすずこちゃんや、みさちゃんが描く漫画の主人公のような顔が世間的に可愛く、その対局にいる自分はぶすだ!ということに気付く。

きりこはショックを受け、拒食になったり過食になったり、睡眠障害になったり引きこもったりする。「人間より猫のほうがいい。」そう思うようになる。

 

十四歳の冬から毎日見た夢をラムセス2世に報告して来たきりこは、ある日予知夢を見る。それが予知夢だったのだと五日後に分かった。

その夢をキッカケに、きりこは自分を取り戻していく。

 

「自分のしたいことを、叶えてあげられるんは、自分しかおらん。」

私もこのきりこの言葉に共感した読者の中の一人だ。

そのページに付箋付けて、その行を蛍光マーカーでなぞりたいくらい。

アンダーライン付けちゃうくらい。響いた。

きりこはきりこ以外に誰でもなく、それと同じように私も私以外に誰でもないのだ。

自分の好きなものは誇りであり、みんなちがってみんないいんじゃん!(by金子みすず)と考えてはいるものの、人と違うことに後ろめたさを感じ堂々と出来なかったり、誰でも攻撃対象になりつつある現代に怯えていたのかもしれない。

自分は自分であろう、と強く思った。

(その"自分らしさ"を見失うことはあるけれど)

 

 

それからきりこは、度々予知夢を見るようになる。

ラムセス2世が死ぬ夢も見て、夢でさんざん泣いた。

きりこのそばにはずっとラムセス2世がいた。

 

このお話は死期を悟ったラムセス2世がまとめたもの。

 猫の生体や生活、猫の世界と人間の世界の比較が面白く描かれている。

他人の目や批判・評価などは猫にとっては排泄物以下だということ。

うらやましいなと感じた。自分もそうでありたいしそうなりたい。

 

猫に関したことわざもちょっと考え直してよ!借りてきた猫はすぐ返して!とか思わず笑っちゃうというか、癒されるというか。

西さんの作品に出てくる動物たちが愛しくてしょうがない!という気持ち、分かってくれる方いるのではないだろうか。喋り方、言葉のセンス、最高。

 

「レモンありまっしゃろ?あのレモンの色した、レモンの形したやつ。」と説明したラムセス2世にメロメロな私です。っていったらラムセス2世に笑止!されるかな。

 

 

 

同年代の女子に読んでほしい作品。

きりこが自分を取り戻していく様子を、是非あなたの目で追ってみてほしい。

 

頭を使わずスルスル読めるので読書苦手な人のイメージ払拭にも良いと思うし、ぜひ西さんの表現にぜひ触れてほしい。私はもっと触れたくなりました。

絶対に温かい気持ちになることをお約束します。

 

 

以上!

ご清覧(使い方正しいのか?)ありがとうございました!